(F)投資判断
〜Net Present Value、Internal rate of return〜
不動産投資のパフォーマンスを大きく左右する、入口戦略(投資すべきか?すべきでないか?)について、そのチェックポイントや指標について知っておきましょう。
(F-1)NPV>0
下の(1)式は投資に掛かる時間の流れも踏まえて、右辺左から時間が早い順に記述しました。まず、右辺第一項は、不動産投資家が自己資金と融資を併せてアパート・マンションを購入した場合の各種手数料込みの初期投資額をマイナスの符号をつけて示し、右辺第二項は、年々得られる投資の果実(フリーキャッシュフロー)をプラスの符号で現在価値に直して示しました。NPVはとても単純な考え方で、マイナスの初期投資額とプラスの回収額の現在価値総計を示しています。
利益を生むアパート・マンションなのかどうか?は、このNPVが0円以上を見込めなければならないということになります。
$$NPV=-Invest_{0}+\sum_{t=1}^n\frac{FCF_{t}}{(1+r)^t}\quad ・・・(1)式$$
$$\begin{eqnarray}NPV&=&-Invest_{0}\\[2mm]&&+\sum_{t=1}^n\frac{FCF_{t}}{(1+r)^t}\quad ・・・(1)式\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}NPV&=&-Invest_{0}\\[2mm]&&+\sum_{t=1}^n\frac{FCF_{t}}{(1+r)^t}\\[2mm]&&\quad ・・・(1)式\end{eqnarray}$$
\(NPV\) :収益不動産(アパート,マンション)の正味現在価値、Net Present Value
\(Invest_{0}\) :初期投資額
\(FCF_{t}\) :\(t\)期のフリーキャッシュフロー
\(r\) :割引率
\(n\) :投資期間(年)
(F-2)IRR>要求リターン
投資の回収総額がちょうど初期投資総額と同じとなる投資収益率をIRRと呼びます。これも投資の是非を判断するのに有用です。簡単に言えば、借入(debt)コストと自己資本(equity)コストの加重平均よりIRRが高ければ高い程、つまり、WACCに比較した投資収益率が上方に位置し、かつスプレッドが開けば開くほど、投資価値が高いということになります。
$$Invest_{0}=\sum_{t=1}^n\frac{FCF_{t}}{(1+IRR)^t}\quad ・・・(2)式$$
$$\begin{eqnarray}Invest_{0}&=&\sum_{t=1}^n\frac{FCF_{t}}{(1+IRR)^t}\quad ・・・(2)式\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}Invest_{0}&=&\sum_{t=1}^n\frac{FCF_{t}}{(1+IRR)^t}\\[2mm]&&\quad ・・・(2)式\end{eqnarray}$$
\(IRR\) :内部収益率、Internal rate of return
\(Invest_{0}\) :初期投資額
\(FCF_{t}\) :\(t\)期のフリーキャッシュフロー
\(n\) :投資期間(年)
(注)\(IRR\)が未知で他が既知
(F-3)投資家出資額(=収益不動産価格-融資額)とEQVの比較
収益不動産(アパート・マンション)購入時に、銀行等による融資額を差し引いた投資家自身の出資額が下の(3)式で見積もった投資家帰属価値より少額であれば投資に値することとなります。
$$EQV=\sum_{t=1}^n\frac{FCFE_{t}}{(1+r)^t}\quad ・・・(3)式$$
\(EQV\) :収益不動産(アパート,マンション)価値のうち投資家に帰属する価値、Equity Value
\(FCFE_{t}\) :\(t\)期の投資家に帰属するフリーキャッシュフロー、Free Cash Flow to Equity
\(r\) :投資家自身の資本コスト(投資家の要求収益率)
(F-4)割引回収期間法
割引回収期間法(Discounted Payback Period Method)は、初期投資額が割引キャッシュフローの合計額と同額になるまでの「時間」が、当該投資家が要求する回収期間より短ければ、投資に値するとの考え方に基づいています。単純な回収期間法では割引現在価値つまり時間価値を勘案していないための修正投資判断基準です。ただし、例えば製造業の機械設備の陳腐化(転売価値があまりないとした場合)などと異なり、不動産は転売時の回収額が大きいため、ほぼインカムゲインだけで回収できる期間を求める製造業の設備投資のケースとは随分様相が異なることに注意が必要です。
$$割引回収期間(年)=k-1+\left(\sum_{t=1}^k\frac{FCF_{k}}{(1+r)^k}-Invest_{0}\right)/\frac{FCF_{k}}{(1+r)^k}\quad ・・・(4)式$$
$$\begin{eqnarray}&&割引回収期間(年)\\[2mm]&&=k-1\\[2mm]&&+\left(\sum_{t=1}^k\frac{FCF_{k}}{(1+r)^k}-Invest_{0}\right)\\[2mm]&&/\frac{FCF_{k}}{(1+r)^k}\quad ・・・(4)式\end{eqnarray}$$
\(k\) :初期投資額を回収し終わる年
\(Invest_{0}\) :初期投資額
\(FCF_{k}\) :\(k\)年のフリーキャッシュフロー
\(r\) :割引率
(注)\(k\)年の1年に満たない部分は単利で計算
(F-5)立地ポテンシャル法
投資不動産のリアルオプション価値向上余地の大きさを計測し、投資対象不動産に収益を伸ばすのりしろ(バッファー)がどの程度存するか?を金額ベースで測定する方法です。例えば、建蔽率&容積率で見て充分な開発余地があるのにそれを活かし切っていない現状の物件を建て直すことにより、収益額の大幅増加が期待できる土地も存在します。NPVと売値を比較するだけの単純評価でなく、リアルオプション価値も見積もるべきということです。(下の(5)式及び投資手法名称は弊社コレクティブハウスによる定義です)
※なお、プログラム開発により建蔽率&容積率で測定した開発余地のデータをお客様に提供することができるようになりました。データをご希望の方はご遠慮なく当社にお申し付け下さい。
$$価格向上余地(円)=-Redevelop_{0}+\sum_{t=1}^n\frac{R\_FCF_{t}}{(1+r)^t}-NPV\quad ・・・(5)式$$
$$\begin{eqnarray}&&価格向上余地(円)\\[2mm]&&=-Redevelop_{0}\\[2mm]&&+\sum_{t=1}^n\frac{R\_FCF_{t}}{(1+r)^t}-NPV\\[2mm]&&\quad ・・・(5)式\end{eqnarray}$$
\(NPV\) :収益不動産(アパート,マンション)の正味現在価値、Net Present Value
\(Redevelop_{0}\) :改修・改築工事費用
\(R\_FCF_{t}\) :改修・改築工事後のt期のフリーキャッシュフロー
\(r\) :割引率
\(n\) :投資期間(年)